社会保険とはご存知のとおり、厚生年金と健康保険の総称になります。
面接の時、あるいは採用説明会の時に「当社は試用期間〇か月です。その間は社会保険に加入できません」と言われたことはありませんか?
試用期間は会社によって異なりますが、大体3か月から6か月が一般的です。しかし、中には採用から1年間を試用期間と設定している企業もあります。
その間、社会保険なしで過ごすということは、働く側の立場に立ってみるとかなりリスキーであると言わざるを得ません。
そこで今回は、試用期間と社会保険加入との関係について詳しくご説明しましょう。
- 試用期間中は本採用後とは待遇が違う?
- そもそも試用期間とは何?
- 試用期間中でも社会保険に加入しなければならない
- 試用期間は未加入だと言われた時の対処法
- 試用期間でも社会保険に加入できる会社を選ぼう!
- ホワイト企業への転職を成功させるたった一つの方法
- 元エージェントが優良企業を探してる方におすすめする転職エージェント2選
- 試用期間中も安心して働くためのQ&A
試用期間中は本採用後とは待遇が違う?
さまざまな転職サイト・求人サイトの情報を見てみると、多くの企業が試用期間を設定しています。併せて、試用期間中の待遇を本採用時と異なるものに設定しているケースも散見されます。
たとえば
◇給与月額250,000円 ※ただし試用期間中は220,000円~
◇賞与年2回(6月、12月) ※ただし試用期間中の支給はなし
◇社会保険加入 ※ただし試用期間を除く
といったように、給与や福利厚生において本採用後よりも劣る条件を設定している企業が多いのです。
試用期間の長さについてもさまざまで、3~6か月を目安に設定している企業がほとんど。6か月以上の長期の試用期間を設定することは働く側の立場が非常に不安定になってしまうことから、仮に労働裁判などになった場合、会社側が不利となるケースも多いようです。
また、試用期間が設定されているのにそれを明記しておらず、入社決定後に試用期間の存在を初めて知るといったケースもあります。原則として求人要綱には試用期間の有無の記載は必須であり、仮に試用期間があるにも関わらず明記がなかった場合は違法となります。
そもそも試用期間とは何?
では、そもそも試用期間とは何なのか、そして企業は何のために試用期間を設けているかについて解説します。
試用期間とは文字通り「お試し採用」期間と考えて間違いありません。企業側(経営者側)は、採用した人員の働きぶりを見極め、労働者側は企業の姿勢や仕事仲間との連携を確認するといった具合にお互いがお互いを確認し合う期間です。
企業側には、試用期間中の雇用者については通常より広い「解雇の自由(解雇権)」が認められています。
たとえば、採用から14日以内であれば、勤務態度の不良を理由に解雇予告なしで解雇できるといった特例が認められているのです。
そのため、企業側は試用期間中に採用した社員の働き具合によっては解雇権を行使することがあります。
ただし、よほどの勤務不良でなければ行使しないこと、および14日を過ぎてしまえば通常解雇扱いとなり解雇予告が必要となります。
また、試用期間はあくまでも本採用を前提とした期間です。特に勤務不良などないにも関わらず、試用期間満了で解雇することは違法となります。
試用期間中でも社会保険に加入しなければならない
さて、このように試用期間は企業側にとっても働く側にとっても「特別」な期間であることは間違いありませんが、その間の待遇を本採用後よりも劣る条件にすることは法律上どうなのでしょうか?
結論からいえば、法的に定められた最低賃金を下回らなければ試用期間中の給与減額は問題ないといえます。しかし、社会保険については試用期間といえども加入は必須です。
働く側が社会保険に加入しなくても良いとされる基準は以下の通りです。
①2カ月以内の契約期間を定めた有期雇用契約である場合かつ有期雇用契約の更新を前提としない場合
②正社員の4分の3未満の労働日数・労働時間で雇用契約を締結する場合
つまり、①か②のどちらの条件にも該当しない場合は社会保険に加入することが義務づけられているのです。したがって、正社員と変わらない労働条件で働いているにもかかわらず社会保険未加入というのは違法な状態であるといえます。
試用期間は未加入だと言われた時の対処法
では、やっとの思いで内定が決まり、これまで勤めてきた会社の退職手続きも終えたのに、転職先が「試用期間は社会保険未加入」であった場合、どのように対応すればよいでしょうか?
まずは「試用期間の社会保険未加入」の根拠を担当者に確認しましょう。雇用契約が前述した条件の①か②に該当しているのであれば良いのですが、そもそも①の場合を試用期間というには無理があります。
試用期間とは本採用を前提とした正社員雇用制度であるため、有期雇用契約とは異なるものです。知らず知らずのうちに有期雇用契約を結んでいる・・・たとえば短期間の契約社員扱いになっている可能性もありますので、雇用契約書はしっかりと確認しましょう。
確認した結果、①にも②にも該当しない場合は、会社側へ社会保険加入の打診をしてください。この時、会社側から拒否される場合は最寄りの年金事務所(日本年金機構)へ相談してください。
年金事務所で「被保険者資格の確認請求」という手続きを行うと、年金事務所側で加入資格の調査を行います。調査の結果、働く側に被保険者資格があると認められた場合は、担当の年金事務所より企業側へ加入手続きを取るように指導が入ります。
試用期間中の社会保険加入未加入については、会社側の裁量で決めることができるものではありません。したがって、労使間の合意があったとしても、加入義務があるのに加入しないということは違法となるのです。
試用期間でも社会保険に加入できる会社を選ぼう!
このように、正社員雇用であれば試用期間中でも、従業員の社会保険加入は必須です。必ず加入しなければならないものであるため、試用期間だからといって社会保険未加入を謳う会社は違法行為を働いているということです。
転職先探しの際は、試用期間の社会保険未加入という会社は避けるのが無難です。既に内定が決まっている場合は、入社日までには相談・交渉する機会を設けてください。雇用契約書も必ず確認してください。
万が一入社後に未加入である旨を言われた場合は、臆せずに会社と交渉することをおすすめします。加入と未加入とでは将来の年金額をはじめとしてさまざまな部分で差異が生じます。
正社員雇用であり、加入条件を満たしている場合は加入してもらい、気持ちよく新しいスタートを迎えてください。
もし、募集要項に特に何も触れられていない場合は、面接の際にしっかりと確認した上で入社を決めるようにしてください。
試用期間中の社会保険未加入は法律的にNGです。
いわゆるブラック企業がこのような制度を運用していますが、転職の際にはこういったブラック企業に引っかからないよう細心の注意が必要です。
ホワイト企業への転職を成功させるたった一つの方法
ホワイト企業への転職を成功させるコツは、転職エージェントを利用する事です。
転職活動において、自分で社会保険加入の件を直接企業に確認するのを躊躇してしまう場合は、転職エージェントに相談してみると良いでしょう。
転職エージェントでは、転職支援の専門家(キャリアコンサルタント)が数多くの案件の中からあなたの話をじっくり聞いたうえで、あなたの希望にマッチした案件を探し出してくれます。
企業側の求人要綱も事前に法的な問題がないかしっかりと確認し、問題のない企業だけをセレクトして紹介してくれるため社会保険の件も気にしなくて大丈夫。
他にも転職エージェントを利用するメリットは全部で3つあります。
・表に出てこない非公開求人に応募できる
・面接のサポートをしてくれる
・年収アップ交渉もエージェントにお任せ
1つずつ解説していきます。
表に出てこない非公開求人に応募できる
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面接のサポートをしてくれる
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エージェントと面接の練習をしておけば、本番で緊張することも少なくなりますね。
年収アップ交渉もエージェントにお任せ
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そういった時に自分から企業側へ言い出すのは難しいですよね。
しかし転職エージェントなら、そんな交渉も快く請け負ってくれます。
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これを利用して、ブラック企業などは最低限の年収や条件交渉をしてくることもあり、結果的に不利な転職になってしまいます。
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他にも転職エージェントは求人紹介、相手企業への連絡、面談などの日程調整等も代わりにやってくれるので、自分は転職に集中する事ができますよ。
以上3点が転職エージェントを利用する大きなメリットですね。
元エージェントが優良企業を探してる方におすすめする転職エージェント2選
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試用期間中も安心して働くためのQ&A
試用期間ってアルバイトやパートでも必要ですか?
試用期間は正社員だけではなく、アルバイトやパートといった雇用形態にも定められることがあります。なぜ試用期間が必要なのかというと、特に雇用期間を設けずに採用する場合、適性を見たいためだと考えられます。
社会保険はどうなる?
試用期間中かどうかに関係なく、社会保険加入の条件に当てはまっていれば、アルバイトやパートであっても加入できます。社会保険には雇用形態がなく、条件に該当する全ての人が加入できる制度です。
試用期間中は社会保険に未加入でも、扶養から外れないといけませんか?
上でお話したように、試用期間中であっても加入条件に該当しているのであれば社会保険に加入されるのが会社側の義務ですし、それを破ると違法になります。
それを踏まえたうえで、扶養から外れる条件をお話します。年収が130万を超えるもしくは超える見込みがある場合は、勤務し始めた日に扶養から外れなくてはいけないという決まりになっています。
103万円の壁って何?
年収103万円を超えると配偶者控除が受けられないため、所得税を負担しなくてはいけません(扶養からは外れない)。
社会保険は過去に遡って加入できますか?
試用期間中に条件を満たしていても社会保険に加入できなかったものの、本採用になってから過去に遡り社会保険に加入できるのか?というケースで説明します。
まず、社会保険に遡って加入できるのか?という点については可能です。試用期間中に社会保険に加入していないということは、国民健康保険と国民年金に加入していたと思いますが、それらは還付される可能性がありますので年金事務所に相談してください。
そして、過去に遡り社会保険に加入する場合は、本人負担分の保険料を納める必要があります。これについては、一気に支払うとなると高額になるので、会社側と話し合って分割していくのが現実的でしょう。
“健康保険の任意継続”とは何ですか?
健康保険の任意継続とは、条件を満たせば退職後も社会保険にそのまま加入することができるという仕組みです。
条件とは、退職日から20日以内に申請する、2ヶ月以上社会保険に加入していた・・・の2つになります。加入期間は2年間。ただし、2年が経過した、1日でも滞納した、新たに社会保険に加入した場合は、強制的に退会手続きが取られます。
なお、手続きは協会けんぽ各都道府県支部になります。
国保とどちらが安いの?
国民保険料は市町村単位で金額が異なりますので、どちらが安いのかについては、自動計算してくれるシミュレーションサイトがありますので、そちらを参考にするとよいでしょう。
社会保険の加入対象が広がったって本当ですか?
平成28年、平成29年は社会保険の加入対象がより広がったことは厚生労働省のサイトで発表されました。
・週30時間働いている人は社会保険に加入できる
・従業員が501人以上の会社であれば週20時間以上でも加入できる
・従業員500人以下でも労使で合意したら加入できる
就業規則で「試用期間は社会保険に加入できない」とあればそれを飲むしかありませんか?
試用期間については企業の独断で決めることはできます(基本6ヶ月以内)。ですが、社会保険加入の有無について就業規則で定めることはできません。条件を満たしていれば必ず加入しなくてはいけないものです。
中小企業の試用期間は、待遇がいまいちですか?
試用期間の待遇については大企業か中小企業か・・・よりも、会社毎に異なるものです。中小企業の試用期間があまりよくない待遇だとしたら、それはきっと経営面への影響を考えて慎重になっているからでしょう。中小企業にとって人事の失敗は大きな痛手となってしまいますから。
試用期間がある企業については、社会保険の有無も含めてどんな内容になっているのか、細かな確認をしてください。
試用期間だけ「時給制」「日給制」の会社って法律違反ではないですか?
試用期間だけは時給制、もしくは日給制と言われた場合、法的には問題はありません。ただし、社会保険については、時給制・日給制であっても加入しなくてはいけないものですし、試用期間も含めて勤務日数はカウントされるので、6ヶ月を超えると有休も発生します。
ハローワークにも社会保険未加入の求人はありますか?
ハローワークでは、労働関係法令違反があった企業の新卒求人の掲載は、一定期間禁止しています。社会保険に加入しなくてはいけない労働条件であるにもかかわらず、未加入であった場合、法令違反となるので求人掲載はできません。
もちろん試用期間であっても社会保険の未加入は違法です。社会保険未加入に対しての罰則は、今後より厳しくなることが予想されます。
標準報酬月額とは何ですか?
毎月天引きされる社会保険料は「標準報酬月額」と等級から金額が決まります。標準報酬月額とは、毎年4~6月の給料の平均額をベースに計算されます。この時に決まった社会保険料は、その年の9月から来年の8月まで同一の金額が差し引かれます。
このように社会保険料は定額制なので、仮に今月はたくさん残業をしてお給料を多くもらっても、天引きされる保険料は先月と同じ金額です。
雇用保険に加入する条件は何ですか?
雇用保険も社会保険と同じく、試用期間かどうかに関係なく加入できるものです。雇用保険の加入条件は、2つだけ。「①31日以上働く見込みがあって」「②1週間で20時間以上働く」これだけです。試用期間は正社員として働くことが前提となるので、当然①は満たしていますし、②もクリアしているはずです。