年金支給開始年齢も徐々に延長され、多くの企業で定年後の再雇用制度が整備されつつあります。日本は急速に少子高齢化の道を歩んでおり、2013年には国民の4人に1人が60歳以上になりました。今後もこの流れは加速し、2040年には3人に1人が60歳以上になると言われています。
こういった社会構造の変化に伴い、ビジネスマンのキャリアプランも変化しつつあります。
そこで今回は、40代以上の転職によるキャリア構築にスポットをあて、どういった意識で40代を迎え過ごすべきかを解説いたします。
崩れつつあるこれまでのキャリアプラン
これまでは、企業によって若干異なりますが大まかには以下のような年代別キャリアプランが一般的であるとされてきました。
20代…キャリアの下積み時代。最前線で働き仕事のノウハウを身につける。
30代…チームリーダーとして小規模の組織をまとめ、組織としての成果を求められる。
40代…マネジメント層の中核として機能し、経営的な視点を持ちつつ現場をマネジメントする
50代…経営幹部クラスとして会社の方向性を左右する立場になる
60代…役員昇格、あるいは再雇用者として組織内で働く(~65歳まで)
年功序列型と言ってもよいキャリアプランですが、少子高齢化の進展に伴いこの年代別キャリアプランが崩れつつあります。少子化により入社する新人が減り、30代40代でも20代のような働き方をしなければ会社が円滑に運営できなくなっていくのです。
多くの企業でこのような事態が進みつつあり、「社内の優秀な管理職に将来の自分の姿を重ねてみる」というような少し前の価値観は既に崩壊しています。若手ビジネスマンにとって、先輩社員はロールモデルにならなくなっているのです。
中高年が転職市場にあふれてくる
しかし、人間の考え方はそう簡単には変わらないもの。30代40代になれば管理職になり、激務の現場から離れて「ある程度ラクができる」と思っている人も多いでしょう。
しかし、現実は上記の通り。専門家として知識やスキルを身につけても、現場で体力勝負の仕事に従事し続ける可能性があります。
そのような現状に憤りを感じたりあきらめたり、さまざまな原因で30代以降の転職を考える人が増えてくるでしょう。昇進しないということは給与も上がらないわけですから、仕事内容や給与に不満を抱き退職する人も増えてくると想像できます。
特に40代以上はその傾向が顕著です。今この時点で40代を迎えている方はもちろん、今の20代が40歳になるころには事態はもっと悪化しています。同期入社の6割以上は何の役職も持たず今と同じような仕事をしているはずです。
しかし、この現実に悲観してはいけません。仮に22歳を新卒入社の年として、65歳をサラリーマン生活終了(=定年退職)だとすると、43歳がサラリーマンとしての折り返し点です。つまり、ベテラン社員として一目置かれる40代でも、まだサラリーマン人生を折り返したばかり。働く時間はまだ半分以上残っているということです。
その残り半分をどのように過ごすか。40代以降の求職者はこの意義を問うことになりますね。
40代での転職成功は一部のエリートのみ?
今現在、40代で転職を成功させているのは、比較的ビジネスエリートと呼ばれる高スペック人材が中心です。一般の転職サイトなどを利用せず、ヘッドハンターや転職エージェントなどを利用して、高待遇の幹部社員として転職する人材ですね。
しかしその一方で、エリートではない(と言ったら失礼になりますが)一般企業の40代社員でも転職に成功している例があります。転職エージェントにコンサルタントとして勤務していた時には、転職成功例が多くありました。その一部を紹介します。
ひとつは競争の激しい都市部ではなく、地方に目を向けて成功した例。都内大手企業に経理として勤務する40代課長のAさんは、出身地である北海道の地場中小企業に財務担当経営幹部として採用されました。地方では大企業の経理経験者は高いスキルを持った人材として引く手あまたです。もちろん年収アップが叶いましたし、生活にも余裕が生まれました。
また、システムエンジニアのBさんも異業種に目を向けて転職を成功させた方です。大手SIerで長年パッケージソフト開発を手掛けてきたBさんは、需要縮小とともに社内での居場所がなくなり転職を検討。
独学でSwiftとRubyを習得し四国の小さなゲームアプリ会社へ転職しました。給料は下がりましたが、自由な時間が増え趣味の登山を楽しむ時間が大きく増えたようです。
このような転職を成功させている方に共通のポイントは、「価値観の転換」です。つまり、これまでのキャリアの上に将来があるのではなく、これまでのキャリアを活かせる「場所の転換」であったり、新たなチャレンジを求めてアクティブに活動する「仕事の転換」であったりと、過去の延長線上で転職を考えない柔軟性とも言える考え方ですね。
40歳からでも新たなキャリアを構築できるか?
これまで、40歳以上の転職といえば、過去の経験やスキル・資格を活かして、同じ業界でさらに上のポジションを目指してステップアップするというスタイルでした。もちろん、今後もそのようなスタイルは続くでしょう。特に時代の流れに左右されることがない高度なスキルを持っている人は市場価値が高いと言えます。
しかし、その一方で、40代から新たなキャリアを構築するための転職も増えてくるでしょう。理由は前述の通り、社会情勢の変化に伴い40代もまだまだ第一線で活躍することが求められる時代になるからです。徐々に脳の働きも体力も低下していく年齢ですが、今後はそんなことを言っていられない時代がもうすぐそこまで来ているのです。
「大企業に入社したから安心」と思っていても、いつ何があるか分からない時代です。ほんの20年前まではシャープや東芝の現在の姿は想像すらできませんでした。今の20代30代が40代になる頃にはどんな激動の時代になっているのかわかりません。
シャープでは、「40歳以下の雇用は守る」と表明しています。裏を返せば40歳以上は辞めてほしいということです。
今でも40歳以上で職を失い転職活動を行っている方は非常に多く存在します。しかし、プライドが邪魔をするのか、条件や待遇を下げることがなかなかできず、キャリアをイチから構築するという選択肢を持てずにいます。こうなると希望条件に合う会社で採用してもらうのは難しいと言わざるを得ません。
好むと好まざるとに関わらず、40代からでも新たなキャリア構築を考える準備をしておかなければ、下流老人へ一直線という事態になってしまいます。
そうならないためにも、40歳からでも新たなスキルを身につけ第一線で活躍するという、これまでの価値観を覆す仕事観を持ち合わせておく必要がありますね。
最後に
40歳からの転職を有利に進めるには、自分自身の価値観の転換とともに、求人サイトに登録する方法も視野に入れておきましょう。
例えば、DODA・リクルートエージェントなどの転職エージェントには、40歳以上の求人情報も数多く見つかります。
企業側も「40歳以上でも歓迎」と大々的に求人広告を出すと応募者が殺到して業務に支障が生じるというケースもあるため、40歳以上の求人案件を公開募集することは多くありません。つまり、非公開求人として転職エージェントへ発注することが必然的に多くなるのです。
非公開求人は会員登録をしないと見れない仕組みになっていますので、求人数が実際にどれくらいあるのかは登録してみるとはっきりするでしょう。
また、担当エージェントによる様々なサポートサービスも行っています。一例を挙げると、採用担当者(人事担当者)に高く評価される面接対策、履歴書・職務経歴書の添削やアドバイスなどがあります。
就職活動以降始めての転職という方にはもちろんオススメですし、何度か経験して慣れている方にとっても効率的な転職活動ができるのではないでしょうか。
40代の転職は勤務地や職種を選り好みせず、未経験の専門職でもチャレンジしてみるくらいの気概を持たなければ、成功は難しいです。今の20代30代も、いずれ自分がこうなることを念頭に入れてこれからのキャリア構築を真剣に考えてみてはいかがでしょうか。