アベノミクスの効果により国内景気も回復基調にあり、企業業績もかなり改善されつつあります。新卒採用市場にもその改善傾向が現れ出しており、大卒内定率が19年ぶりに更新されるなど雇用環境が好転しつつあることを実感します。
しかし、新卒での就職活動に失敗し、期せずして既卒になってしまう人も一定数います。もし就職活動に失敗し既卒になってしまった場合、どのようにしてリカバリーすればよいでしょうか?
- 既卒者を取り巻く就職環境
- 既卒者と新卒者との間にある壁
- 「なぜ既卒になったのか」の理由付けが明確か?
- タイプ別既卒になった理由と回答例
- 既卒者の転職を成功させるたった一つの方法
- 元エージェントが既卒者の転職におすすめする転職エージェント2選
- 新卒至上主義に負けないためのQ&A
既卒者を取り巻く就職環境
まず、少し厳しめのデータからご紹介しましょう。
就職・転職ビジネスを展開している株式会社ディスコが2015年10月に発表した「2015 年度・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査」によると、既卒者を新卒枠で受け付けている企業は全体の7割弱。
前年より増加傾向にありますがそれでも3割以上の企業は既卒を受け付けていません。さらに、実際に既卒者に内定を出したかどうかという設問に対しては、14.2%しか「出した」と回答しておらず、これは既卒者にとってかなり厳しい数字と言わざるを得ません。
これを見ると、卒業してしまうよりも就職浪人してしまうほうがマシだと思われても仕方ないでしょう。1年違うだけで就職環境が激変してしまうのですから。
では、既卒者が新卒者と比べてなぜこのように厳しい状況に置かれるのか、その理由などを見ていきましょう。
既卒者と新卒者との間にある壁
なぜ既卒者と新卒者にはこのような差が生じるのでしょうか?
昨年の既卒者と今年の新卒者は、歳も1年しか違わず、社会人経験の無いまっさらな状態であることに違いはありません。
転職エージェント(転職サイト)の立場から見ると、経験者ではないのですから、昨年の既卒者も新卒と同様に扱っても支障が無いと感じるのですが、そうではないのです。
その理由として最も大きいのが、採用する企業側の新卒至上主義があります。
日本企業は、毎年4月入社の新卒者を定期採用し、入社年次で昇進や給与などを管理する仕組みを採用している会社が多く、特に大企業は新卒採用ですべてを終わらせるのがベストだという価値観を持っています。
従って、第二新卒や既卒、中途採用はイレギュラー採用というカテゴリーに分類され、いわゆる「欠員補充」扱いとなるのです。
海外では新卒一括採用の習慣がある国はほとんどありません。基本はインターンで学生時代から職場に顔を出しそのまま就職するか、あるいは既卒採用するかです。
個の日本独自の新卒一括採用制度が、新卒者と既卒者との間に壁を作っていると言ってもよいでしょう。
「なぜ既卒になったのか」の理由付けが明確か?
このように、既卒者が新卒者と同じ土俵で勝負するのは少しハードルが高いのです。だからといってそのハードルを避けて通るわけにはいきません。
職歴ありならば第二新卒としてまた別のルートがありますが、職歴無しですから新卒者と就職戦線を戦わなければならないのです。
そこで、既卒者にとって重要なポイントは「なぜ既卒者になったか」ということ。この理由が採用担当者に明確に説明できれば、新卒者と同じ土俵に立って選考を通過できます。
なんとなく・・・だとか、気がついたら新卒採用が終わっていただとかの理由では、とてもじゃないけど勝負にはならないのです。
次に、なぜ既卒になったのかの理由(就職経験がない理由)と、面接官に質問された時の回答例をいくつか例示します。
タイプ別既卒になった理由と回答例
①資格取得のために既卒になった
司法試験などの難関資格を取得するため勉強に時間を費やし、そのために就職活動を行わず既卒になった方は、「資格取得」という明確な理由があるため、そのまま正直に話しましょう。
例)「弁護士になりたくて予備試験を受けるため在学中も卒業後も勉強に時間を費やしました。しかし、三振(3回不合格)したのであきらめて企業へ就職する道を選ぼうと決めました」
②夢をあきらめきれずに追いかけていた
ミュージシャンや役者など、大学を卒業しても自分の夢をあきらめきれずに追いかけていた方は、あきらめた夢をどうするのか、なぜあきらめたのかをしっかりと語りましょう。
例)「役者になるために頑張っていたのですが、大学卒業して3年以内に芽が出なかったらあきらめようと決めていました。結果3年経ってもダメだったので、すっぱりと夢をあきらめて就職活動をしています」
③家族の事情で既卒になった
親の介護などで働くことができず既卒になった場合、介護はどうなったか(=入社してからもちょくちょく休むことにならないかという疑念)をしっかりと説明しましょう。
例)「親が脳梗塞で倒れ要介護となったため、働くことができずに実家で介護をしていました。来年から親が滞在型介護施設に入居することになったため、介護の必要がなくなり、就職活動を行っています」
④単位取得に追われて満足な就職活動ができず既卒になった
3年になるまであまり講義を受けずに、卒業単位が足りなくなって4年生で単位取得に追われてしまった方は、自分のミスを反省しそれをどうリカバリーしたかを中心に回答しましょう。
例)「正直に言うと3年生まであまり必死に勉強しておらず単位が足りなくなりそうだったため、4年の時に朝から晩まで授業に出ていました。そのため結果的に就職活動がおろそかになってしまいました。計画的に物事を進める大切さを痛感したので、今後は計画的に活動していくつもりです」
⑤一生懸命就職活動をしたけれど就職できなかった
自分の適性や大学のレベルを見誤り、超人気企業ばかりを受け就職に失敗した方は、なぜそうなったのかを説明し、同じ失敗を繰り返さないよう対策を立てて臨んでいることをアピールしましょう。
例)「航空会社を希望していたのですが、その業界に固執するあまり他の業界研修すら行わず、既卒として就職活動を続ける結果となりました。視野を広く持ち就職活動を行うことが大切だと考え、コミュニケーション能力を活かして接客業に就きたいと考えています」
このように、なぜ既卒になったのか、その理由はどのように消化して今に至るのか、今後どうするのかといった点を、企業側が不安を抱かないように説明することが必要です。
既卒者の転職を成功させるたった一つの方法
既卒者の転職を成功させるコツは、転職エージェントを利用する事です。
既卒での就職活動は、余裕が無く自分を客観的に見ることができない場合もあります。
また、大学の就職課の支援を満足に受けられないことも。そこで、既卒者で就職活動を行う場合、求人数が豊富な転職エージェントを利用することをおススメします。
転職エージェントに登録すれば、既卒者の採用に精通したキャリアコンサルタントが慣れない就職活動にも親身になって相談に乗ってくれ、適切なアドバイスを行ってくれます。
あわせて、多くの求人案件の中から既卒採用を行っている業界や職種の案件を見つけ出し、模擬面接なども経験することができます。
転職エージェントは求職者一人ひとりと密にコミュニケーションを取り、ハッピーな就職を成功させることが使命です。そこで働くキャリアコンサルタントは、既卒者にとって公私にわたり頼れる存在となるのです。
転職エージェントを利用するメリット3つ
・表に出てこない非公開求人に応募できる
・面接のサポートをしてくれる
・年収アップ交渉もエージェントにお任せ
1つずつ解説していきます。
表に出てこない非公開求人に応募できる
求人検索をして、気に入った案件がないと諦めていませんか?
実は、転職サイトに掲載されている求人はほんの一握り。
専門性の高いものや良質な案件は非公開の求人として、運営企業が当てはまる人にのみ紹介しているのです。
その大きな理由として挙げられるのが「ライバル企業に知られたくないから」。
求人内容をライバル企業に見られることで、どんな事業をしようとしているのか、どの職種にどれだけの報酬を支払っているかがわかってしまいます。
そこで、重要な仕事やポジションの求人を非公開にして、応募してもらえる人にだけ提供するよう運営企業に求めているんです。
転職エージェントに登録すると、この非公開求人を紹介してもらう事ができるようになります。
面接のサポートをしてくれる
「書類選考は通過するけど、面接でいつも失敗してしまう」そんな悩みを抱えている人はいませんか?
転職エージェントは転職のプロ。
ビジネスマナーから転職業界のトレンド、そして何より企業に関しての情報を多く持っています。
今までの面接で落ちてしまったのは、マナーが間違っていたり、アピールの方法がズレていたのかもしれません。
転職エージェントはマナーの講習ももちろんのこと、応募先企業に合った面接対策も教えてくれます。
あなたの経歴で、どこをアピールポイントとすべきか、想定される質問から事前にどのように回答すれば良いのかも一緒に考えてくれます。
エージェントと面接の練習をしておけば、本番で緊張することも少なくなりますね。
年収アップ交渉もエージェントにお任せ
とてもやりたい仕事でも「年収がもう少し良ければ…」「条件がちょっと合わないかな」と思うことも少なくありません。
そういった時に自分から企業側へ言い出すのは難しいですよね。
しかし転職エージェントなら、そんな交渉も快く請け負ってくれます。
自分で転職活動をして応募していると、どうしてもあなたが立場上弱くなりがち。
これを利用して、ブラック企業などは最低限の年収や条件交渉をしてくることもあり、結果的に不利な転職になってしまいます。
年収アップやキャリアアップのために転職活動をしている方にとっては、転職エージェントは大きな力となります。
他にも転職エージェントは求人紹介、相手企業への連絡、面談などの日程調整等も代わりにやってくれるので、自分は転職に集中する事ができますよ。
以上3点が転職エージェントを利用する大きなメリットですね。
元エージェントが既卒者の転職におすすめする転職エージェント2選
元転職エージェントの私から見て、既卒者の転職に本当にオススメできると感じた転職エージェントは以下の2つです。
どちらがオススメなのか?と聞かれたら、私は両方とも登録することをおすすめしています。
実は、非公開求人は運営会社ごとの差が出る部分なので、2社のエージェントに希望条件を出すと、同じ案件はほとんど出てきません。
単純に2倍の非公開求人を見ることができるので、良い条件の仕事を見つけやすくなります。(※どちらも登録は3分程度、完全無料で利用できます。)
1.DODA 2人体制での手厚いサポートが魅力
DODAは「キャリアアドバイザー」と「採用プロジェクト担当」の2人体制で行う、手厚いサポートが魅力です。
キャリアアドバイザーは電話面談やカウンセリングを通して、あなたにあった職業選択や、キャリア開発のアドバイスを行ないます。
これに対し、採用プロジェクト担当は、求人情報や企業情報の提供、面接や書類作成のサポートなどを行います。
他社では1名で行う為、仕事が雑になりやすい傾向がありますが、2名体制で行う事で質の高いサポートが受けられます。
求人案内も早いので、なるべく早く就職したいと考えている人には、DODAがオススメですね。
DODA公式サイト:https://doda.jp
2.リクルートエージェント 求人数は業界ナンバー1
リクルートエージェントは人材紹介業界最大手の「リクルート社」が提供するサービスです。
現在20万件以上の求人が登録されていますが、ホームページから探せるのは3万件程度で、残り80%は非公開求人となっています。
リクルートエージェントに登録することで、17万件を超える非公開求人の紹介を受ける事ができます。
他社と比べても求人数が圧倒的に多いので、就職を考えているなら必ず登録しておきたいサービスです。
リクルートエージェント公式サイト:https://www.r-agent.com
就職後に後悔しないように、この2社は必ず抑えておきましょう!
新卒至上主義に負けないためのQ&A
新卒至上主義のメリットって何ですか?
新卒至上主義のメリットは2つの側面から考えられます。
求職者側の学生さんからしたら知識や経験がなくて関係する学位を持っていなくても採用される可能性は十分にあるということ。
そして採用側の企業からすると、新卒採用に力を入れると新入社員をまとめて教育できること、そして社会人として白紙の状態から教え込めることがメリットとして上げられます。
海外からみると新卒至上主義はおかしい考え方ですか?
日本でも多くの人が新卒至上主義はおかしいと唱えていますが、海外から見てもやはりおかしいと思われる可能性は大いにあります。
海外・・・たとえばアメリカだと、新卒であることは重要視されません。日本にこんな会社があれば間違いなくブラック認定だろうなというインターンに何度も参加して勝ち取らなくてはいけません。
また、フランスでは26歳未満の失業率が高いですし、新入社員を教育するシステム自体がありません。即戦力求む!という厳しさがあります。
いつか新卒至上主義が崩壊する日はきますか?
今はまだ新卒至上主義だと言われる時代ですが、近い将来変化が訪れるかもしれません。大手でいえばYahoo!JAPANは、新卒一括採用を行わず2016年から10月より30歳未満であれば通年応募できるようになりました。
今後、ヤフーのような企業は増えていくでしょう。新卒至上主義が崩壊する可能性はあります。
大企業は洗脳するために未だ新卒至上主義なのでしょうか?
大企業は新卒者の採用に力を入れているところが多いです。この流れに何もしらない新卒者を採用したら洗脳できるから、新卒至上主義はなくならないんだという意見があります。
洗脳とまでは言いすぎですが、確かにその会社独身のルールや風習を身に付けてもらうには、何もしらない新卒者のほうが教えやすい面はあるでしょう。
ただし、ブラック企業につかまった場合は、本当に洗脳されてしまうかもしれません。ブラック企業による洗脳は怖いです。働いた経験・・・つまり判断基準がないと、すぐに飲み込まれてしまいます。
公務員試験は新卒至上主義ですか?
公務員試験は公正で公平なものというイメージがありますが、合格率については女性が有利となる自治体が多いと言われています。どうやら筆記試験と面接試験における男女の合格率が圧倒的に違っていることが、そのように言われるようになった原因のようです。
筆記試験は男女差がほとんどないのに、面接試験の合格率だと女性のほうが倍近く多い自治体は多いです。
新卒至上主義とは言われることはないものの、女性のほうが有利という可能性はあるかもしれません。