ここ数年、景気が上向き傾向にあるとはいえ、まだまだ雇用状況の大幅改善には至っていません。
新卒採用やキャリア採用市場は一部活況を呈しているという報道も見受けられますが、一方でフリーターや引きこもりの増加も懸念されており、いわゆる「社会の底辺」から脱出するにはハードルが高いといえます。
そこで今回は30代後半職歴無しの状況に置かれた方にスポットを当て、どうすれば就職できるのかについてお話いたします。
- 「30代後半職歴無し」は決して少数ではないという現実
- 30代後半は経歴があっても、転職成功までの道のりは厳しい
- 残された道は引きこもりだけ?
- 「アルバイトでもよいからキャリアを積む」ことの是非
- 不人気業種であれば正社員としての職歴を積むことも可能
- 30代後半職歴無しでも転職を成功させるたった一つの方法
- 元エージェントが30代後半職歴無しの方に本気でおすすめする転職エージェント2選
- 30代後半からの人生を豊かにするためのQ&A
「30代後半職歴無し」は決して少数ではないという現実
ごく普通のサラリーマン、特に団塊の世代やバブル世代から見ると「30代後半になるまで定職に就かずさしたる職歴も無い」という人は単なる落ちこぼれに見えてしまうでしょう。中には社会的失格者という烙印を押す心無い人もいるようです。
しかし、転職エージェントとして数多くの転職活動を支援してきた立場から言うと、30代後半になるまで職歴が全くない、あるいはほんの数か月しかないという人は決して珍しい存在ではありません。
彼ら彼女らの多くは新卒時に「就職しなかった」のではなく「就職したくてもできなかった」のであり、自ら望んで現在の立場に甘んじているわけではないのです。
1990年前半にバブルが崩壊し、それ以降企業は新卒採用を大幅に削減しました。いわゆる就職氷河期の到来です。この状況は2000年前半まで続き、経済界では「失われた10年」と称されることもあります。
就職氷河期における新卒の就職率は60%を切る年もあるなど、悲惨な現実が新卒を襲ったのです。この就職氷河期に学校を卒業した世代が今ちょうど30代後半を迎えているというのが「30代後半職歴無し」を大量に生んだ背景ということです。
30代後半は経歴があっても、転職成功までの道のりは厳しい
転職35歳定年説と言われ、「転職するなら35歳までが限界」という意見をあちこちで見かけます。実際、新卒で企業に就職しある程度のキャリアを積んだ方でも35歳後半になると転職サイトなどのサポートがあってもスムーズに進むとは言えません。転職市場がどうなっているのか、理由を説明していきます。
①既存社員とのバランスが難しいから
30代後半での転職となると、社内にそれなりのポストを用意しなければなりません。つまり、転職者に求めるハードルが一段と上がるのです。
管理職ではない一般社員を採用するのであれば何も30代後半を採用する必然性はなく、20代社員の伸びしろに期待するのが一般的です。つまり、30代後半であれば既存社員とのバランスを考えより高いスキルを企業は求めるのです。
②会社の色に染まらないから
30代後半になると、それまで培ってきた仕事の進め方やルールなどが確立されています。
転職してもその会社の色に染まらず、これまでのやり方が正しいと信じて和を乱すことがあります。そういったリスクを企業は恐れるため、30代後半の採用には消極的になります。
③給与が高いから
年功序列の賃金体系が定着している企業においては、社歴が浅くとも年齢が高ければある程度高い給与を支払うことになります。いくら転職者本人が希望しても低い給料を適用できないのです。
年収アップやキャリアアップを目標に転職活動を頑張っている人は多いですが、35歳より若い年齢の人でも簡単ではありません。
このような事情があり、30代後半になるとキャリア転職でも難しくなるのです。自分の市場価値を把握し、転職プランをしっかり練っていく必要があります。
残された道は引きこもりだけ?
「キャリア転職ですらこの状況。ましてや30代後半職歴無しで就職なんて夢のまた夢・・・」と考えてしまうのも無理はないでしょう。
また、メディアでは”30代後半の転職”については多く取り上げていますが、”30代後半職歴無しで初めての就職”についてはほとんど情報がありません。
40代に入るとますます就職は厳しくなります。30代後半で就職をあきらめてしまえば、待っているのは40代になっても50代になっても引きこもりせざるを得ない生活。
政府の実施する引きこもり支援策も10代~39歳までが対象であり、40代以上は引きこもりとして認知されず統計からも支援策からもこぼれ落ちる存在になってしまいます。そうなる前に、30代後半で社会から取り残されないようにする方法は何かないでしょうか?
「アルバイトでもよいからキャリアを積む」ことの是非
30代後半職歴無しから脱却しようと、とりあえずアルバイトでもよいから何かしらの職歴を積んでおこうと考える人も少なくはないでしょう。果たしてアルバイトをすることはその後の就職活動に何かプラスの影響があるでしょうか?
残念ながら、30代後半になってアルバイトをしても、それを企業は「キャリア」として見てくれることはありません。つまり、履歴書の職歴欄に書いてもあまり意味が無いのです。
しかし、アルバイトは全く意味が無いかといえばそうではありません。アルバイトとは言え社会から必要とされる存在であり、社会人としてのマナーや立居振る舞いなどは身につきます。キャリアとしての価値はありませんが、自分自身の個人スキルアップには大きく貢献します。
また、正社員で働くための予行演習として自分の心構えができる点もメリットの一つです。
不人気業種であれば正社員としての職歴を積むことも可能
上記理由により、アルバイトよりも正社員としてキャリアを積む方がよいのは事実です。実は30代後半職歴無しでも正社員として就職できる企業はあります。
例えば介護業界や外食業界などの、世間一般的に「不人気業種」と言われている業界であれば、常に人材募集を行っており、社会人としてのマナーが備わっていれば書類審査で落ちるという事はまずないでしょう。(だからと言って面接を通過するとは限りません)
もちろん、不人気業種になるくらいですから仕事内容や労働環境は必ずしも恵まれているとは言えません。人気企業と比べると給与や福利厚生などは見劣りすることもあるでしょう。
しかし、名だたる人気企業が30代後半職歴無しを採用してくれる可能性は限りなくゼロに近いです。夢や希望を語れる年代ではないことを自覚し、地道に、かつ真摯に内容をいとわず仕事に取り組み、職歴を積むことを優先すべきであり、将来の話はその後にしたほうが良いでしょう。
とは言っても、どこでも良いわけではありません。ブラック企業にはつかまらないようくれぐれも気をつけてください。高望みはいけませんが、ある程度の条件を決めておくことは大切です。
また、自分がどういう職業に就きたいと思っているのか、強みは何なのかといった自己分析はしっかりやっておきましょう。
職業訓練という選択肢もある
職業訓練の講習を受けたことはありますか?
受講料がかかるどころか、手当てを支給され、就職するためのアドバイスもしてくれます。
同じような境遇で悩んでいる人もいると思いますので、一緒に頑張っていけることが大きな力となってあなたを支えてくれるでしょう。
30代後半職歴無しでも転職を成功させるたった一つの方法
30代後半職歴無しでも転職を成功させるコツは、転職エージェントを利用する事です。
転職エージェントを利用する大きなメリットは全部で3つあります。
・表に出てこない非公開求人に応募できる
・面接のサポートをしてくれる
・年収アップ交渉もエージェントにお任せ
1つずつ解説していきます。
表に出てこない非公開求人に応募できる
求人検索をして、気に入った案件がないと諦めていませんか?
実は、転職サイトに掲載されている求人はほんの一握り。
専門性の高いものや良質な案件は非公開の求人として、運営企業が当てはまる人にのみ紹介しているのです。
その大きな理由として挙げられるのが「ライバル企業に知られたくないから」。
求人内容をライバル企業に見られることで、どんな事業をしようとしているのか、どの職種にどれだけの報酬を支払っているかがわかってしまいます。
そこで、重要な仕事やポジションの求人を非公開にして、応募してもらえる人にだけ提供するよう運営企業に求めているんです。
転職エージェントに登録すると、この非公開求人を紹介してもらう事ができるようになります。
面接のサポートをしてくれる
「書類選考は通過するけど、面接でいつも失敗してしまう」そんな悩みを抱えている人はいませんか?
転職エージェントは転職のプロ。
ビジネスマナーから転職業界のトレンド、そして何より企業に関しての情報を多く持っています。
今までの面接で落ちてしまったのは、マナーが間違っていたり、アピールの方法がズレていたのかもしれません。
転職エージェントはマナーの講習ももちろんのこと、応募先企業に合った面接対策も教えてくれます。
あなたの経歴で、どこをアピールポイントとすべきか、想定される質問から事前にどのように回答すれば良いのかも一緒に考えてくれます。
エージェントと面接の練習をしておけば、本番で緊張することも少なくなりますね。
年収アップ交渉もエージェントにお任せ
とてもやりたい仕事でも「年収がもう少し良ければ…」「条件がちょっと合わないかな」と思うことも少なくありません。
そういった時に自分から企業側へ言い出すのは難しいですよね。
しかし転職エージェントなら、そんな交渉も快く請け負ってくれます。
自分で転職活動をして応募していると、どうしてもあなたが立場上弱くなりがち。
これを利用して、ブラック企業などは最低限の年収や条件交渉をしてくることもあり、結果的に不利な転職になってしまいます。
年収アップやキャリアアップのために転職活動をしている方にとっては、転職エージェントは大きな力となります。
他にも転職エージェントは求人紹介、相手企業への連絡、面談などの日程調整等も代わりにやってくれるので、自分は転職に集中する事ができますよ。
以上3点が転職エージェントを利用する大きなメリットですね。
元エージェントが30代後半職歴無しの方に本気でおすすめする転職エージェント2選
元転職エージェントの私から見て、30代後半職歴無しでもオススメできると感じた転職エージェントは以下の2つです。
どちらがオススメなのか?と聞かれたら、私は両方とも登録することをおすすめしています。
実は、非公開求人は運営会社ごとの差が出る部分なので、2社のエージェントに希望条件を出すと、同じ案件はほとんど出てきません。
単純に2倍の非公開求人を見ることができるので、良い条件の仕事を見つけやすくなります。(※どちらも登録は3分程度、完全無料で利用できます。)
1.DODA 2人体制での手厚いサポートが魅力
DODAは「キャリアアドバイザー」と「採用プロジェクト担当」の2人体制で行う、手厚いサポートが魅力です。
キャリアアドバイザーは電話面談やカウンセリングを通して、あなたにあった職業選択や、キャリア開発のアドバイスを行ないます。
これに対し、採用プロジェクト担当は、求人情報や企業情報の提供、面接や書類作成のサポートなどを行います。
他社では1名で行う為、仕事が雑になりやすい傾向がありますが、2名体制で行う事で質の高いサポートが受けられます。
求人案内も早いので、なるべく早く就職したいと考えている人には、DODAがオススメですね。
DODA公式サイト:https://doda.jp
2.リクルートエージェント 求人数は業界ナンバー1
リクルートエージェントは人材紹介業界最大手の「リクルート社」が提供するサービスです。
現在20万件以上の求人が登録されていますが、ホームページから探せるのは3万件程度で、残り80%は非公開求人となっています。
リクルートエージェントに登録することで、17万件を超える非公開求人の紹介を受ける事ができます。
他社と比べても求人数が圧倒的に多いので、就職を考えているなら必ず登録しておきたいサービスです。
リクルートエージェント公式サイト:https://www.r-agent.com
就職後に後悔しないように、この2社は必ず抑えておきましょう!
30代後半からの人生を豊かにするためのQ&A
ビルメンテナンスの仕事は職歴なしだと厳しいですか?
ビルメンテナンスの仕事は、日本にビルが存在する限り必要とされますし、力仕事というほどでもありませ。また残業も少ないですから、30代後半の方が目指す仕事としてはおすすめできるといえます。
ただし、職歴なしの場合ですと注意点があります。ビルメンはコミュニケーション能力や交渉力がないと務まらない仕事。これまでそういったスキルを鍛えるチャンスに恵まれなかったのなら、採用のハードルは上がってしまうでしょう。ビルメンは資格や経験がなくてもコミュニケーション能力の高さで採用率が上がるといわれています。
30代後半で職歴なしとなると、勝負できるのはこれまで何をやってきたのか。自信が持てないという人は、転職エージェントやハローワーク、その他の相談窓口をフル活用してください。
営業の仕事は職歴なしでも採用されるものですか?
営業の仕事は、コミュニケーション能力・セールスする製品やサービスに対する深い理解と愛情・企画力や提案力の高さが必要になります。求人自体はたくさんありますし、未経験歓迎という記載も多いですから、挑戦しやすいといえるでしょう。
30代後半職歴なしということが響いて、何度も面接を受けるも内定には至らない場合は、上でおすすめしているように転職エージェントの利用を検討してみてください。もしくは、ハローワークの就職支援サービスを利用するという方法もあります。
30代後半職歴なしの方ですと、実習型雇用とトライアル雇用に挑戦できます。どちらも企業との相互理解を深めた上で雇用へと繋げていくためのサービスですから、これから頑張りたいという人に適しています。