競争を勝ち抜き、無事転職先が決定! 後は今の会社へ退職を伝えてのんびりするだけ・・・と思っていませんか?
実は、「転職先が決まってから今の会社を退職するまでの行動は、次の勤務先での評価につながる可能性がある」というと驚く人もいるでしょう。
しかし、実際今の会社をスムーズに退職することができなければ次の転職先へ少なからず迷惑をかけることは自明の理ですね。
そこで今回は、転職先が決まってから今の会社を退職するまで、つまり転職決定後の退職活動にけるマナーや注意事項などをピックアップして解説します。
- 転職前の行動が次の勤務先に影響を及ぼす
- 転職先から内定が出ても決して気を抜いてはダメ!
- 1か月先の退職日まで有給休暇をすべて使うのは?
- 転職先で即戦力として活躍するために顧客情報を持っていく!?
- 社内外への挨拶はメールで済ませないほうがよい
- 失業保険はもらえる?
- 最後に
転職前の行動が次の勤務先に影響を及ぼす
さらなるキャリアアップを目指して転職活動を行い、そして無事希望の企業への転職を成功させたアナタは、次なる業務への期待と希望に胸を膨らませて日々を過ごしていることでしょう。
人間とは非常に現金なものです。こういう時期は頭の意識が既に転職先へ向いてしまっているため、今の会社での仕事及び業務引き継ぎや退職手続きに集中できず、中途半端なまま投げ出してしまう人もいます。
それだけであればまだかわいいものです。中には転職先で高評価を得ようと、今の会社の機密情報を持ちだすといった情報漏えいを犯してしまうことすらあるのです。
転職が決まったらまず真っ先にやらなければいけないのは、今の会社の上司に退職の意思を表明し、退職願を提出することです。そして上司と一緒に業務引き継ぎスケジュールを作成することです。
この時点で「俺はもうこの会社からいなくなるし、この会社のことはもうどうでもいい」とばかりに投げやりな対応をしたり、あるいは無断欠勤したりするとどうなるのでしょうか。
どうせ次の転職先にはバレないから何やっても平気!と思っていたら、それは認識が相当甘いと言わざるを得ません。
転職先から内定が出ても決して気を抜いてはダメ!
そもそも転職活動というのは今の会社に内緒で行うものです。そして転職先から採用内定をもらってはじめて今の会社に退職の意思を告げることになります。つまり、会社側からすればある日突然人員体制に欠員が生じることになるのです。
ではここで、社員が退職する際に会社側が行う事務処理を見てみましょう。
1.退職手続き
社員から退職願を受け取ったら、退職日を確認し退職関連の労務処理を開始します。この処理は健康保険証の手続きや退職金支給準備など、非常に時間がかかり手間も煩雑です。
書類の中には、関係機関へ提出する際に退職者自身の署名が必要なものもありますので、しっかりと精読し署名を行ってください。
健康保険については、退職後、すぐに新しい会社での仕事をスタートするのであれば、社会保険の手続き、被扶養者届を出すことになります。
入社日まで期間が空くようなら、年金手帳や健康保険資格喪失証明書などの書類を用意して国民健康保険に加入手続きを行うか、配偶者が入っている健康保険の扶養家族になるといった選択肢もあります。
2.業務引き継ぎ
次に、退職者が今現在携わっている業務やプロジェクトについて、直属の上司が後任者を選定し業務を引き継がせます。多くの場合退職者と引継ぎ者がマンツーマンで行うケースが多く、営業職であれば客先同行により引き継ぎ挨拶なども一緒に行います。
さて、この一連の流れのどの部分が次の転職先に影響してくるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
まず、保険の手続きについてです。健康保険や厚生年金は会社が窓口となって手続きしています。A社を退職してB社に転職する場合、A社で退職における資格喪失手続きを行わないとB社で保険加入手続きができないのです。
この際、A社による一連の退職手続きが正常に終えていなければB社における保険手続きが完了せず、A社に問い合わせを行うこともあります。その際、A社での手続き未完了が退職者自身のサボりやいい加減な対応に原因があるとしたら・・・。
また、A社での業務引き継ぎについてもしっかりと完了させておくことが必要です。B社に出社開始したにもかかわらずA社の後任から「これどうすればいいですか?」と問い合わせの電話がかかってくることがあるかもしれません。
これは、B社の上司から見ると、「しっかりと引継ぎをしなかった人間だ」と見られるためあまりいい評価にはつながりません、
このように、退職プロセスを疎かにしてしまうと次の勤務先での評価も下がってしまう危険性があるのです。
1か月先の退職日まで有給休暇をすべて使うのは?
次に、退職する会社(A社)における有給休暇の扱いについてご説明しましょう。
通常、退職の申し出は退職日の1か月前です。実働にすると20日強といったところでしょうか。
そして、A社に長年勤務していた場合にはかなりの日数の有給休暇が余っていることと思います。退職日までにすべて使いきってしまってもまだ余るという方もいるでしょう。
仮にA社に余った有給休暇の買取制度やそれに準じた制度があれば、特に損をすることなく退職日までしっかりと引き継ぎ業務などを行えるかもしれません。
しかし、先程も述べたように、退職に関しては様々な手続きや業務引き継ぎなど、1~2日では終わらない事務処理が発生します。
「退職日まで全出勤日数を有給休暇で」という気持ちは否定しませんが、現実問題として無理であることは社会人ならば理解できることでしょう。
次の勤務先の入社日とも相談になりますが、比較的余裕を持った退職スケジュールを組み、ゆとりを持った退職活動と有給消化を行えるように留意したいものですね。
転職先で即戦力として活躍するために顧客情報を持っていく!?
以前、転職エージェントのコンサルタントとして多くの転職者の相談にのっていた時に、このような方がいらっしゃいました。
営業職を希望している方だったのですが、「今の会社の顧客情報を持っているのが私の強み。それをそのまま次の転職先に持ちだし、営業リストにすれば会社に貢献できる」といった人がいます。
また、ここまで極端ではなくとも、在職中に取引先と交換したクライアントの名刺をそのまま次の転職先へ持ち出す人もいます。実はこれらの行為は不正競争防止法に抵触する恐れがあり、情報を持ちだした者が責任を追及されることになります。
一般的に、業務に関連して入手した取引先会社名や連絡先電話番号などの顧客情報は「営業秘密」に該当します。
不正競争防止法では、営業秘密の保有者に損害を加える目的で営業秘密を使用したり開示したりする行為を不正競争の1つとして定義しています。
なお、営業秘密は個人に帰属するものではなく企業に帰属するものです。つまり、顧客情報や名刺は企業の財産であり個人が持ちだせるものではないと定義されているのです。
これらの営業秘密が他社に伝わると営業秘密の保持者に損害が生じる恐れがあります。従って、このような営業秘密は転職先に持ちだしてはダメなのです。
もし違反した場合、そして違反が発覚した場合には、本人だけでなく転職先の会社までもが訴訟の対象となります。十分に注意したほうが良いでしょう。
社内外への挨拶はメールで済ませないほうがよい
営業や販売など社外の人との関りが多い部署にいた場合、お世話になった取引先へのあいさつは決してメールのみの通知で終わらせず、後任者と訪問するなどしてしっかりと挨拶を行うようにしましょう。
また、今の会社の上司や同僚なども、今後のあなたのことを応援してくれることもあるでしょう。
よほどのブラック企業でハラスメントばかりだったというケースは例外ですが、多くの場合退職時に後ろ足で砂をかけるような真似をせず、上司や同僚に対してもしっかりとした大人の対応で退職のあいさつを行うようにしましょう。
失業保険はもらえる?
在職中に内定をもらった場合であっても、退職後は2~3ヶ月ほど準備期間を設けたうえで新しい職場での仕事をスタートさせる人もいると思います。
こうした場合の失業保険はあるのか?という点についてですが、次の就職先が決まっている場合は受給資格はありません。求職活動中の人に向けて支給されるものが失業保険ですから。
失業手当を受給するための条件は次の通りです。
- 就職する意志がある
- 求職活動を行っている(例:ハローワークで就職活動をする)
- 離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある
この3つの条件をクリアしている必要があります。万が一、内定が取り消された場合は、すぐに受給申請の手続きを行う必要があります。
ちなみに、転職活動においても内定取り消しはあるのか?という点については、可能性はゼロではありません。不当な理由だった場合は、解約無効・損害賠償請求を検討する人もいますが、既に退職が決まっているなら、転職活動を再開したほうが良いという考え方もあります。
最後に
次の就職先が決まったら、どうしても次の新しい仕事へ意識が移ってしまうことは仕方ありません。しかし、今の会社における退職処理を怠っては、結局自分の首を絞めることになってしまいます。
最後まで気を抜かず、円満かつスムーズに退職できるようにしっかりとプロセスを踏んで次へとステップアップするようにしましょう。