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労基へ通報は意味なし!?育児休暇取得で部署異動になり労基へ行った話

 私は、当時勤務していた会社に対して、大きな不満があり、労基(労働基準監督署)への通報を決意しました。

その状況と、私のその後をご紹介いたします。労基へ通報を検討している方に、少しでも参考になれば幸いです。

2度目の育児休暇取得で部署異動に

私は38歳女性です。以前、IT系の会社へ勤務していました。

そこは7年間勤務していた会社で、合計2回の育児休暇を頂きました。1回目の育児休暇後は同じ部署に戻れたものの、担当業務が変わったため、大半は新しい業務となりましたが、なんとか仕事を覚えてこなしていました。

そして、2回目の育児休暇取得後の職場復帰の際は、同じ部署に戻ることはできず、大きく部署移動となってしまいました。

育児休業後の部署異動は、法律ではっきり「ダメ」という風に記載されていませんが、以下のように「不利益な取扱いをしてはならない」と、曖昧ではありますが記載されています。

育児介護休業法第10条(不利益取扱いの禁止)
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

しかし、この時点で2回もの育児休暇を取得していたので、そのことに関して会社に対し文句を言うことはできず、部署異動にも応じました。

実際に、職場復帰および部署異動してみるものの、子供3人の育児をしながらの会社勤めは本当に大変なものでした。

移動先では休みも取れず残業の日々

会社では新しい業務が山盛り状態。

9~16時の時短勤務であったのにもかかわらず、フルタイムのメンバーと同じ業務をしかも兼務で強いられ、少し仕事を減らして欲しいと、直属の上司Aとの月一面で何度か交渉したにもかかわらず、結局減らしてもらえず、休みも取ることもできず、残業の毎日でした。

残業代は基本的につけにくい雰囲気だったので、あまりつけていませんでした。

職場復帰後、自分の時間も取れず、日々の生活に追われ、だんだんと家事育児もままならなくなりました。

上司からの突然の呼び出しで「懲戒免職もんだよ」

そんな時、別件で事件が起こり、上司Aに「こんなの懲戒免職もんだよ」と言われました。

その別件というのは、後輩女性が、理不尽に上司に怒鳴られ、言い返すことができずに、ミスをなすりつけられていたので、私の上司Aのさらに上司Bに直接このことをメールで伝えました。

後輩女性の上司と私の上司は同じ上司だったので、私の中では「間違っていない」という判断でした。

しかし、翌日、上司Aから呼び出しがあり、「こんなの懲戒免職もんだよ」と言われたのです。

初めは意味が分からなかったのですが、どうやら上司Aに相談することなく、上司Bに直接言いつけたことが原因だったようです。

私は、その言葉にひどく傷つき、その発言が最大のきっかけとなり、労基に相談することを決意しました。

上場企業の内部監査部門はまったく機能せず

私の勤務する会社は上場企業でしたので、一度社内の内部監査室に匿名で相談しようと思いましたが、私がその「内部監査室」の担当の1人でしたので、同じ内部監査室の男性に相談しましたが、軽く受け流されてしまいました。

この時点で、内部監査室の機能は、全く機能していないということになります。

労基へ匿名メールで通報するも返事はなし

社内の内部統制は、残念ながら機能していなかったので、まずは労基へメールを送ることにしました。

会社へ知られることを恐れ、初めは匿名のメールを送りました。内容は、「不当な育児休業後の人事異動と、根拠のない暴言について」。

しかし、匿名であるためか、1週間待ってもなかなか返事をもらうことはできませんでした。

▼労働基準関係情報メール窓口 送信フォームhttps://www.mhlw.go.jp/form/pub/mhlw01/roudoukijun_getmail

今度は名前を書いて労基へ通報するも返事はなし

次に、名前を書いてメールを送りましたが、この内容では緊急性が低いと思われているためなのか、メールの対応は後回しなのか、1週間待っても特に返事が来ることはありませんでした。

労基へ直接電話するも「大丈夫ですよね?」

今度はさらに勇気を出して、名前を出して電話を掛けてみました。

つながりはしたものの、話し中が暫く続き、時間をおいてようやく繋がりました。

「不当な育児休業後の人事異動と、根拠のない暴言について」を話しましたが、電話に出た担当の方は質問をしながら話を聞いてくれるものの、「相談」という感じで「特に大丈夫ですよね?」と言われてしまい、あっけなく電話相談として終わってしまいました。

後日、再度労基に電話を掛けることにしました。今度はもう少し、切羽詰まった感じと緊急性をプラスして伝えました。

すると、電話に出てくれた担当の方が前回と違っていたというのもあるのか、前回よりも話を聞いてくれました。いずれにしても、何らかの「証拠」はないかと聞かれました。

「懲戒免職」と言われたときは、会議室に呼ばれて二人きりで言われたので、ボイスレコーダーも何も用意をしていなく、特に証拠はない状態。上司Bに直接伝えたときのメールはありますが、それ以上の証拠は、ありません。

とりあえず、証拠になりそうなものを探して、時系列で状況を教えてくださいとのことでした。

また、遠回しにですが、給料や残業の未払い、不当解雇、休日がないなどの案件と比べると、やや緊急性や重要性が低くなるというような言い方されました。

数日後、証拠となりそうなメール、チャットなどを探し、後日訪問しました。

労基の方は、話を聞いてくれるものの、やはり、緊急性、重要性という面では優先順位は低いようで、なかなか話は進みませんでした。

且つ、私は会社にばれたくなかったため、できれば匿名で行きたいと思っていましたが、調査が入るには、名前や連絡先などあったほうが、より優先度は上がるというような言い方をしていました。

担当の方は、顔色を変えず淡々と話していたのが印象的です。こういうことで、労基へくる方はたくさんいるのだろうなという印象を持ちました。

私は、まだ名前を明かすまでは勇気がなく、一旦その日は労基を後にし、岐路につきました。

名前を出して労基へ通報する事を決意

数日後、再度よく考えた末、自分の名前を出して、「不当な育児休業後の人事異動と、根拠のない暴言について」、再度改めて労基へ「通報」することを決意しました。

これは、私にとってかなり勇気がいることでした。ここまで来て後戻りはできないという想いで揺れ動いていましたが、もし今回でだめなら、もう諦めようと思いました。

なぜなら、この労基に対する労力と時間、精神的な苦痛を考えると、会社を辞めて新しい仕事を探す方がよっぽど楽だと思ったからです。そのくらい、私にとって心身ともに苦痛なものでした。

名前と連絡先を伝えることで、優先順位が上がると思い、思い切って、連絡先を伝えることにしました。

その後、詳しい状況を聞かれ、メールやチャットなど資料となり得そうなものを紙に印刷して資料として持参しました。そして、その日以降毎日ドキドキしながら、会社に調査が来るのを待つことになりました。

結局労基の調査は入らず私は退職へ

ところが、何日経っても労基からの「調査」は、入りません。

会社の電話が鳴るたび、会社のインターホンが鳴るたび、FAXが来るたび、私の中で緊張が走りました。

そうした日々を2週間くらいでしょうか、過ごした頃、もうその緊張感から解放されたいと思うようになり、もう会社を辞めることを決意しました。

労基への通報経緯

私の場合となりますが、労基への通報経緯をまとめました。

労基へ匿名のメールを送付→1週間返信なし

名前を記載し、労基へメールを送付→1週間返信なし

名前を出して電話→あっけなく「電話相談」として終了

緊急性をプラスし、名前を出して再度電話→何か信ぴょう性のある証拠はないかと聞かれる

メール、チャットなどの証拠となり得そうなものを持参し、後日訪問→連絡先を伝える勇気がなく一旦帰宅

後日、勇気を出して、名前と連絡先を出して、改めて「通報」する→調査が入ったかどうかは不明

結局、心身ともに耐えられなくなり、退職を決意

退職

私は覚悟をしていたようで実際には覚悟ができていなかったため、中途半端なやり取りが多くなり、最終的に自分の身が持たなくなり、退職を決意しました。

これから労基へ「通報」を考えている方へのアドバイス

もし、これから労基へ通報しようと思っている方がいましたら、通報する際には、名前と連絡先を伝える覚悟はあるか、通報したことが会社にばれたとしてもその覚悟はあるか、会社を辞める覚悟はあるか、会社と戦う覚悟はあるか、ということを念頭に入れておくべきです。

絶対にばれるということはありませんが、絶対にばれないとも言えないからです。

気軽に相談だけするのであればいいのですが、本気で覚悟をもって「通報」する際は、それ相応の覚悟を持って「通報」すべきです。

安易に気軽な気持ちで、名前も出さずに、ばれずに通報したとしても、いずればれてしまう可能性があるということです。

<これから労基へ通報しようと思っている方へのアドバイス>
・名前と連絡先を伝える覚悟はあるか
・労基へ通報したことが会社にばれたとしても、覚悟はあるか
・いざというとき、会社を辞める覚悟はあるか
・会社の人と戦う覚悟はあるか

さいごに

私のような「不当な育児休業後の人事異動と、根拠のない暴言について」などは、優先順位が低くなってしまうと感じました。

また、労基への「通報」には、それ相応の覚悟が必要ですし、そこまで戦う覚悟がなければ、通報しない方が自分のためだと感じました。私の経験がどなたかの参考になれば幸いです。

 

寄稿 まゆ

 

労基へ通報すべきか迷っている人向けQ&A

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 本人に代わって家族が労基に通報する場合、どんな書類が必要ですか?

本人に通報する意志はないものの、辛い労働環境の中で働いている様子を見て家族が労基へ通報するケースもあります。この場合は、その会社で働いていることを証明できるものと、家族であるという証明が必要になります。その他には会社名・所在地・代表者の名前・電話番号といった情報も提示した上で、どういった違反があったのかを説明することになります。

明らかに違反しているという証拠があれば、状況を有利に運ぶことができるでしょう。

家族ではない他人が通報できる?

第三者の他人でも労基への通報は可能です。その際は上で挙げた情報をまとめておいてください。また、あなたの身分証明証も必要になります。

アルバイトという立場でも労基に通報できますか?

労基へ通報するとなった場合、アルバイトか正社員かというような雇用形態は関係ありません。必要書類と会社情報、そして違反している証拠になるものを用意しておきましょう。

労基に通報するならクビを覚悟しないといけませんか?

労基への通報は、労働者の権利を守るためとはいえ、会社と対立する可能性・通報者が知られてしまう可能性はあります。働きやすさを考えると最悪退職も辞さない覚悟も必要になるでしょう。

ですが、自分の意志ではなく、通報したからクビだと言われたとか、通報後に明確な理由もなく突然解雇されたという場合は不当解雇にあたります。中には、自己都合で退職するように嫌がらせをしてくるような所もあるようです。

こうしたケースの相談先は、労基や労働組合で受け付けてはいますが、より濃いアドバイスが欲しいということであれば、弁護士さんへの相談がおすすめです。不当解雇の撤回や慰謝料の請求が可能です。

有給休暇を消化させてもらえません。労基への通報で改善できますか?

有給休暇さえ取れれば問題ないとか、その他の待遇はしっかりしているという場合は、出来る限り会社側と揉めずに解決を目指したいですよね。有給休暇については労基へ通報する前に次のことをやってみてください。

まず上司に有給休暇の申請をします。就業規則も頭に入れた上で話をするとスムーズだと思います。もしこの日はできないと言われたなら、いつならできるのか確認してください。

この時に「うちは誰も有給休暇なんて取っていない」とか「そんなに休みたいなら退職しろ」といった返答があれば違法である可能性が高まります。ただし、労基へ通報する前に社内の相談窓口や労働組合にもかけあってみてください。この際は、会社への敵対心や不信感は見せず、有給休暇が取れなくて困っているというニュアンスで相談してください。

それでもだめなら労基への通報を真剣に検討することになります。証拠となるメールや書類、音声などを用意しておくことをおすすめします。

有給休暇の取得妨害は違法行為ですから、あまりにも悪質な会社なら法的手段を取るという選択肢もあります。

上司のパワハラを労基に通報した場合、どんな調査が行われますか?

上司のパワハラ問題が深刻な場合、残念ながら労基へ通報で改善させることは難しいでしょう。当然パワハラはあってはいけないことですし、違法ではありますが、労基は労働基準法において違法であることが証明されなくては動きません。

労基へ通報は意味がないと言わざるを得ませんが、労働基準監督署の中の「総合労働相談コーナー」なら有益な情報を得られるかもしれません。”個別労働関係紛争の促進に関する法律”に基づいて、会社内で解決を目指せるのか、それとも解決・改善を促してくれる第三者解決機関が必要なのかを判断します。

給料未払いで労基に通報した場合、未払い分はちゃんと支払われますか?

労基に通報すれば未払いに対して調査が行われ、未払いであることを証明できれば賃金の支払いを勧告します。ただし、強制力はありませんので、ちゃんと支払われるかどうかは、結局は経営者次第なんです。労基への通報で給料未払いが解決できない場合は、弁護士への相談を検討することになります。

労基に通報したいけどその後の報復が怖い・・・どんな対策が必要ですか?

当たり前ですが、労基への通報で何らかの報復をすることは違法行為です。対策としては弁護士などの専門家に相談することがまず挙げられますが、残念ながら報復行為までしてくるような会社と健全な関係を築いていくのは難しいと言わざるを得ません。

この場合は、上記の寄稿者のように転職することを対策とする人もいますし、会社側の悪質さが際立つのであれば、慰謝料請求をして戦う道もあります。

労基への通報で会社が営業停止や倒産することもあるのでしょうか?

労基に通報することで営業停止になることはまずありません。労基は是正勧告をしますが、営業停止についてはその業種の監督官庁が行っています。

結果的に営業停止になったり、会社のイメージダウンによって倒産になる可能性はありますが、労基が直接的にそれらに関与することはありません。